切なさに似て…
不思議そうに信浩の様子を見ていると、垂らした前髪の間から眉が下がり困ったような目をしている。


あれ…? おかしいな…。

治は番号までは教えてくれなかったって。でも、信浩は…。


「…ってことは、治には番号教えてたの!?」

「声がデカい。びっくりする」

「あ、ごめん…」

口元に手を添え、再び口を開こうとした私に、信浩が先に口を開けた。


「とりあえず、シャワー浴びて来い。話はそのあとでしよーぜ」

と、信浩は軽い溜め息を吐き私の肩に手を置くと、バッグと共に無理矢理脱衣所に押し込む。


渡されたタオルをギュッと握りしめ、バタンと閉まったドアを見つめた。


なんだかはぐらかされた気がするのは気のせいだろうか。


どっちにしろ、要望通りにシャワーを浴びて着替えを済まさなければ、きっと信浩は何も話してはくれなさそうだ

そして私も、そうでもしなければ話なんてせずに外へと飛び出していただろう。
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