切なさに似て…
広めの脱衣所はシャンプードレッサーに洗濯機だけという質素で、やっぱり特に何もなく整然としていた。

取り出した着替えとタオルを、空のプラスチック製の籠へ置き、曇りガラス張りの浴室のドアを開ける。換気扇が引っ切り無しに室内の除湿に励んでいる。

一応持ってきていたお風呂セットをシャンプーラックに乗せ、服を脱いだ。早くシャワーを済ませなきゃという焦りからか、適当に脱ぎ棄てた服は丸めて籠へと押し入れる。


シャワーヘッドから降り注ぐ熱めの湯は気持ちよく、久しぶりに心が落ち着くようなそんな気分。

もくもくと発生する湯気の隙間から、信浩が愛用していたシャンプーやボディソープが映る。


そこに女っ気はちっとも感じられない。チラッとだけ見た洗面台にも女の人を“連れ込んでいる”様子は伺えなかった。


信浩は自分の彼女を、自分のテリトリーに連れ込んだことはなかったから。だからこそ、尚更と不可解でならない。


本気…、なのかな。


それに…。

治には新しい携帯番号教えて、私には教えてなんてくれなかった。


治もズルイ。

知ってたのなら、教えてくれたていいのに。

そうしたら、来なかったのに…。
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