切なさに似て…
「違う!」

首を振りそう答える。即座に否定されて面白くないのか、すぐさま顔色を変えた信浩の唇がすこし尖ったように見えた。


焼きもちなんかじゃない。


寧ろ、気になるというか不安という思いが強くて、何もないって言われてもやっぱり信用できない。

何回好きだって言われても、何回好きだって言っても。

本当に? 嘘じゃなくて?

疑心暗鬼に何度も心の中で問いかける。


奇妙な片想い期間が長すぎて、夢でも見ているんじゃないかって。どうしても信じることができないんだ。


「タイミング悪く今日だなんて」

耳に神経を集中させようやく聞き取れるくらいの声で、ブツブツといじけた口調で話すと、眉間に皺を作り難しそうな顔をする信浩。


「…月曜日会社で会ったらちゃんと言うから。マンションの前にいた子が彼女だって、言うから。それに、先輩はわかってると思うから。怪しんでたしなー…。だから…、何も心配するなよ」

と、真っすぐな瞳に絡め取られる。


あまりに真剣な目をして言うから、私はただ頷くだけで。

もうその言葉だけで十分だとさえ思ってしまう。


「よし、この話はもう終わり!髪、乾いたか?ちゃんと拭いたのか?」

信浩はいきなり大きな声を出しそう言うと、手を伸ばし私の肩にかけていたタオルを引きずり、そのタオルでそっと頭を包まれた。


「まだ、濡れてるじゃん。そのままにしてたら風邪ひくぞ?寒くないか?」

なんて声をかけられた私は、ポカーンとする。
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