切なさに似て…
「だけど…、態度とか…、急に変わられても、対応しきれないから!」

そう言った私の声は、少し乱暴に髪の毛の水分をタオルで拭われて、まともに言葉にならなかった。


「はいはい、わかったって」

不満げな私に何故か楽しそうな表情を浮かべて、唇の端を持ち上げる信浩は未だニヤニヤしている。


少しずつ、始まったばかり…。

とは言っても気恥かしさは隠しきれなくて、これからもこんなことが続くのかと思ったら気が遠くなりそうになる。

普通はもっと、甘い感じなんだろうか?

それともこんなんでいいのか。

どうしたらいいんだろう?


背中の痒い所に手が届かなくて、唸りながらもがいてる。そんな気分。

それが、ちっとも嫌じゃない。

寧ろ、ちっとも届かないのに、手が届いた時の快感を味わった時の想像をしてしまっている。そんな状態。


そもそも、好きだみたいなことを言っておきながら、連絡先もなにひとつ教えてくれなかったのは信浩だ。

それなのに、急に付き合うとか、恋人とか。どう考えても不思議でならないし、それなりの対応とか…。

付き合ってるなりの言動を、どうしたらいいのかわからないのは事実だ。


「何だよ?」

「何でもない…」

「俺じゃ不満なわけ?」

そんなに不満そうに映るのか、私の眉間をぐりぐりと信浩の人差し指が押し付けられる。
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