切なさに似て…
広めのベッドに寝転がり、慣れてきたのか若干開けた視界。

闇に包まれた部屋に明かりを点けようとは思わない。

できればこのままで、心を落ち着かせたかった。

信浩に毒づいた台詞に悔やんではいない。


…やっぱり私たちが付き合うなんて、無理なんじゃないか。

そう思わずにはいられない。


友達期間が長すぎるから、恋人としては噛み合わないのかな。


友達と恋人は違う。

友達で許されることでも、恋人じゃ許されない。

恋人で許されることでも、友達じゃ許されない。


私たちが本当に心からわかりあえるなんて、できるの?

それを考えると、不安だけが押し寄せてくる。



ガチャリと開いたドア。

信浩が入ってきたようで、私はわざとらしくドアとは反対に向き直る。

背中の方から小さく足音が聞こえ、不意にスプリングが沈む。

どうやらベッドの端に腰を下ろしたみたいで、ピッと電子音と同時に一気に部屋が明るくなった。


「電気くらい点けろよ」

と、背に受けた言葉に私は何も返さない。


リモコンで操作され光を放つ証明に、私は目を細めて信浩の次に出る行動を背中で感じ取るのに、神経を集中させた。


掛け布団に隙間が空き涼しい風が吹き込まれる。私のすぐ隣、ベッドに重みが加わり布団の中でモゾッと動いた。

確認しなくとも、信浩が入り込んできたのが伺える。
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