切なさに似て…
私は慌てて上半身を起こし、信浩に目線を向けた。


「な、何してんのっ?」

「は?何って寝るんだよ。この部屋に布団ねーし。まさか、俺のベッドなのに床で寝ろって言うんじゃねーだろうな?ソファーで寝る気もないから」

一緒になって上半身を起こした信浩はそう言うと、また何の躊躇いもなくシーツへと背中を預けた。


確かに…。

信浩の部屋だし、ソファーはあってもわざわざベッドがあるのに、ソファーで寝るわけない。前みたいに布団だってないだろう。


ってことは…。


「一緒に…、寝るってこと?」

恐る恐る、目を完全に閉じてしまっている信浩に聞く。


「しかたねーだろ」

目を開けることなく、付き合ってんだからそれも有りだ。なんて大胆なことまで言っちゃってる。


冗談なんかではなく信浩は本気なようで、瞳はつむったまま空いている自分の隣をポンポンと叩き、私に寝るように促す。


「それとも、俺と一緒に寝るのが嫌なわけ?」

と、薄目を開けた信浩と目が合った。


「嫌とかじゃなく…」

そう言いかけて言葉を詰まらせる。


今まで一緒の布団やベッドで寝たことは一度たりともない。

だから今まで、間違いを犯すことなく私たちは友達でいれたんだ。


だけど、今日付き合ったからって、はいわかりました一緒に寝ましょう。とはいかない。
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