切なさに似て…
「聞いてんのー?電気もガスも停まっちゃったの」


そんな2回も3回も言わなくてもいい。

電気が停まってる。いや、正確には停められたが正しい。

供給停止されたのは、この部屋に入ってすぐにわかった。


手探りで探し当てた電気の紐を何度となく引っ張っても、明かりは点かなかった。

だから。あぁ、またか。と、深く溜め息を吐いたのちに。

こうして、携帯電話の微かなディスプレイの照明で身なりを整えていたんだから。


早く用意しないと、いつ来るかわからない。来たら面倒なことになるのが窺い知ることが出来ていたからこそ、急いでいたわけで。


そこに突如乱入して来てしまったのは紛れも無く、私の母親だった。


言わんこっちゃない。まさしく面倒な話しを持ち掛けられてしまっている。

持ち掛けられているどころか、金銭をせしめようとしている。


せびるのはいつものことだし、大して気にしたもんじゃない。

ただ、今回は何かが違うということは読み取れた。


レナが零したあの台詞。

『あの人、お姉ちゃんの物捨てるって言ってたよ…。』


いつ自分の荷物を取りに来るのかと、この人が待ち構えていても不思議ではない。
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