切なさに似て…
「明日には片すから」

やり過ごすつもりで考え無しに吐いた台詞に、いきなり後悔してしまう。


明日って、明日じゃん。そんなの急すぎる。

自分で言った言葉になんの計画性も備わっていない。


「ふぅーん。それならいいんだけど」

と、珍しく素直に納得したかの様に見えたオバサンの言葉は、これで終わらなかった。


「こんなはずじゃなかったんだけど…。何であたしが2人も育てなきゃならないわけ?しかも女2人って、辛気臭いったらありゃしない。何考えてんのかさっぱりだわ」

煙と一緒に漂って来たその言葉に、嫌悪感が芽生える。


冗談じゃない。

こんなはずじゃなかった?

それはこっちの台詞。


育てなきゃならない?

この人に育てられた覚えなんて一度もない。


何考えてるのかさっぱりだ?

それはこっちも同じだ。


その言葉をそっくりそのまま投げ返してやりたくなる程に、頭のてっぺんまでドクドク血が駆け巡る。

これ以上ここにいても、時間の無駄。腹が立つだけだと判断した私は足を踏み出す。


「あとさぁ…。これじゃあ足りないから、明日も来るなら都合つけといてよ。レナの奴、バイトまだ探してないしさ…」

出た右足を引っ込め振り返ると、真っ赤な唇にタバコを挟み手の上でお札をトントンと叩いていた。


当然でしょ?と、言いたげな姿に、馬鹿馬鹿しくなって私は鼻をハンッ鳴らす。
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