切なさに似て…
*****

あの人が言う“あいつ”は現在の彼氏。名前すら知らないけれど、顔は見たことがある。


『お前、こんなデカイ娘までいたのか!?聞いてないぞ』

取り乱した男は上半身は裸、下半身は汚らしいパンツ一枚の姿で、だらし無い体をさらけ出していた。


『違うわよ~、こっちはあたしの子じゃないの。あっちも違うけどね、それよりーぃ。さっきの続き…』

こっちとは私のことで、あっちとはレナのことを指していた。


たまたま荷物を取りに来ただけの私。その前で、50歳はとっくに過ぎた2人の、愛を育む行為が行われる。

はっきり言って、他人の性交為を見るのは好きじゃない。気持ち悪いだけ。そんなのお構いなしに、喘ぎ声は増す一方。


第一、場所や立場を弁えるような人であるわけがない。

物心がついた時からあの人はそういう女だと、レッテルを貼ったのは仕方のない話し。

『あんた、よく平気でいられるね』

『いつものことだから』

隣の部屋でまさに大人の戯れの最中だというのに、レナは素知らぬ顔で机に向かう。
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