切なさに似て…
雪に埋まりながら、そんな昔のことを思い出したその日も、信浩のマンションへと向かったんだっけ…。


そうして、今もそんな昔を思い出しながら、塀の隅に解けずに残った雪で雪だるまを作っている。


いつも、そうやって待っている時は、冬だった。


堅い雪で作った雪だるまは、いびつな形をしていてあまりに不細工な容姿をしていた。



しっかし…。

…遅いっ!!寒いっ!!


もうすぐ着くって、もうすぐじゃないし。

こんなに待たせてっ。…って、私はいうなれば居候の身だったっけ。


お腹空いたなぁ…。

ぶらぶらと両足をぶらつかせ、食材が詰め込まれた半透明のビニール袋に視線を落とす。


…明日、どうしようかな。


ふと、目の先に浮かび上がる黒い影に、顔を上げた時。

「何がどうしようかなって?」

信浩の真っ直ぐ見下ろした目と、私の目が合った。


「あ…、信浩。おつー。遅いからほんとに」

「遅い?そうかぁ?」

立ち上がった私に、首を傾けて考え込んでいるかのように顎に手を当てた。

信浩は前屈みに腰を曲げ地面に腕を伸ばす。私が放って置いた買物袋を持ち上げると、さっさとマンションの中へと姿を消した。

幅の狭い1階廊下に備えつけられた、集合ポストを覗き込む信浩に追い付き、その横に並ぶ。


「ピザに、出前に…。あとはサラ金のビラばっかだな」

ポストに入っていたチラシの数々をわしづかみ、ポストの扉をパタンと閉めた。
< 76 / 388 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop