切なさに似て…
壮快に二段飛ばしで階段を駆け上がって行く、信浩の後に続いて私も二段飛ばしとはいかないけれど小走りで上る。


「エレベーター欲しいね」

息を切らし、そう言うと。

「4階までしかないのにエレベーターかよ。ははっ、ちっとは運動しろよ。確実に運動不足だろ」

明らかに、けなしている口調で笑い飛ばされた。

「今、バカにしたしょ?」

「した」

信浩の顔を睨むようにして見上げると、平然と頷いて見せた。


「そーですか。はいはい」

不満そうに言い返した私は、4階の廊下に辿り着くと、信浩を追い越して部屋のドアの前まで早歩き。


誰もいない部屋のチャイムのボタンを押した。

“ビィーッ”

いつものように間抜けな音を響かせる。


「いちいち鳴らすなっつーの。んで、毎回、毎回笑うなつーの」

「だって、マヌケなんだもん、この音」

私の隣に追い付き、少し目元を緩ませていた信浩によって扉の鍵が開けられた。


続けて信浩は、パチッと玄関の電気をつけ部屋の奥へと進む。

真っ暗闇に覆われていた室内が全体を照らし出す照明が点けられて、やはり狭い部屋が浮き彫りになる。


「先にシャワー浴びてるわ」

と、信浩は鍵の束をテーブルに置き、ベッドの上にジャケットを放り投げ、言葉を繋げる。


「適当にやってて」

「はぁーい」

そう返事すると、浴室のドアがパタンと閉まる。
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