春が来るまで…
五時間目の終わりを告げるチャイムが鳴った。




僕は喜美の方に押しやったノートを自分の机に戻す。




喜美はそれを左手で押さえ、右手で何か書き、左手を離した。




恐る恐る、ノートを覗く。




心臓は爆発寸前。




『私も。』




一言だけ、僕が欲しかった一言だけが、そこにいた。




喜美の顔を覗き込む。




喜美は赤い顔をして髪を耳にかけながら、困ったような、嬉しいような顔で不器用に微笑んだ。




僕は笑うことも忘れ、喜美に見取れていた…。
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