春が来るまで…
お母さんが話し始めた。




『この子ったら、ボーイフレンドがいるなんて一度も言ったことなかったんですよ。私、全然気付きませんでした。母親として、ちゃんと喜美の様子を見てたつもりなんですけどね…』




『田中君、喜美とはいつから付き合っているの?』




お母さんが僕の目を見た。




『…六月からです。僕から告白しました。席が隣になって…。僕が喜美さんを好きになったのは一年の時からです。喜美さんは、廊下でよく女友達に囲まれ、いつも素敵な笑顔をしていました。とても憧れていました』




『そんな前から…』お母さんはまた口に手を当てた。
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