春が来るまで…
お父さんは頷いて名刺を受け取ると『わかりました』と言い、今度は僕のことを睨むように見据えた。




『君は、喜美のことを愛しているのか?』静かにお父さんが尋ねた。




僕は少し考えてから口を開く。




『僕はまだ、愛、ってなんだかわかりません』




『喜美ちゃんのことは大好きです。すごく大事です。世界で一番大好きです。でも、愛してるかって聞かれると…わかりません。わからない言葉は使えません…』




お父さんは大きく頷いた。




『君はいい子だ。最初君たちの話を聞くまでは、中学生同士で付き合ってるなんて馬鹿げてると思っていた。だけど、君は喜美を大事だと言ってくれた。愛がわからないから答えられないと言った。私は君たちの恋を見守るよ…』




ずっと黙っていた喜美が泣き出した。




僕は喜美の手を握り、頭を撫でた。




喜美は消えそうな声で『お父さん、お母さん、ありがと…』と言った。




お母さんも少し涙ぐんでいた…
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