春が来るまで…
お父さんは『ひとつだけ約束して欲しい』と言った。




『二人で喜美の部屋にいるときは部屋の扉を開けておくこと。もちろん君の部屋に喜美が行くときも同じだ』と。




僕と喜美は、声を揃えて『わかりました』と答えた。




お父さんはもう一度、大きく頷いた。




『喜美、お前の先生は本当にいい先生だ。和樹君もとてもいい子だ。喜美、感謝の気持ちを、忘れるなよ』お父さんは優しく喜美にそう言った。




喜美は『はい』と涙を拭いて微笑む。




先生は『恐縮です』と頭を下げた。




僕は『ありがとうございます』と言って、お父さんとお母さんに頭を下げた。
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