春が来るまで…
家に入ると、母さんが目でダイニングにつくよう促した。




僕は母さんの前に座る。




母さんがゆっくりと話し出した。




『先生も仰ってたけどね…、あなた達にどこまで性に関する教育がされてるか、正直母さんにはわからないのよ…』




『最近は愛があればセックスするとか、余りにも性を軽視しすぎてると思うの…セックスはね、愛のためにあるんじゃない。子供を作る行為なのよ』




僕は頷く。




『中学生が子供を作っても悲しい結末にしかならない。体も心も消えない傷が残るのよ…。高校生も、同じよ。子供を育てるには金銭面ももちろん、心も体も『親』としてやっていけないと、だめなの。』




『お母さんだって中学生の頃好きな人がいたわ。片思いだったけど…。あなた達二人はお互いに惹かれあってお付き合いをしているけど、愛があればなんでもしていいなんて思っちゃだめよ。わかってるわね?』




僕はもう一度深く頷いた。




母さんは、しばらく僕を見つめ、それから優しく微笑んだ。




『和樹の幸せを願ってるわ』そう言うと、母さんは席を立ち、洗い物を始めた。




僕はしばらく動けなかった。




母さんの愛情に涙が出そうだった…
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