【企】エープリル・フール
「忘れさせてあげるから…」


薄明かりの中で、私はタケルに抱かれようとしていた。


何が何でも、手に入れたいものは、そう簡単に入らない。


私のように…。


傷つくのが怖くなった臆病者がまた増えた。


失恋したと嘘をついて、タケルに甘えてる私。


愛なんていらない。


「何を、忘れさせてくれる訳?」


タケルが、ベッドの横にある、ランプに手を伸ばした。


「…ちえの気持ちだよ!」


「あたしの、気持ち?」


涙もでない。


私の心の中なんて、知りもしないくせに。


「あいつの事なんて、忘れなよ。なっ?」


タケルが言ってる『あいつ』なんて存在しないのに…。


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