Leliant ~母の名の下に~
「……ごめん、母上。命日に報告したかったんですが……父上がその日に結婚しろと。急にも程がありますよね」
馬車で郊外に出て更に進み、王家専用の森に来ていた。
森といっても外郭だけで、中には草原も花畑も湖もある。王族以外は立ち入りを許されておらず、王都では二台あった馬車の片方は森の外で待機している。
その森に囲まれた一角、リーリアントの花畑を見下ろす丘に二人は来ていた。
墓標だった。もっとも当初のものではなく――あれは王家の地にすら置かれていなかった――後にファネリッジⅣ世によって建て直されたものだ。
ここにある無数のリーリアントも王が植えたものである。
墓標にはジョシアの母の名前と神聖言語の彫り込み。
――我を許し給え。汝の他に心は譲らぬ。