Leliant ~母の名の下に~
1、過ちを犯してでも

 城では噂が行き交っていた。

 外洋視察にでていた王太子――この国唯一の王位継承者である――が、娘を連れて帰ってきたというのである。

 これまで浮いた話のひとつもなかった王子だ。

 婚約者はいたことにはいたが、親が決めただけと言っても過言ではない。プライベートでは殆ど接触がなかったような相手だ。

 それが船での帰りの道中、彼女にべったりと張り付き何度も接吻していた姿が見られたというのだから、噂にもなる。

 そして噂の通り、王都に到着した王子の隣には見慣れぬ娘の姿があった。


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