Leliant ~母の名の下に~
ジョシアが部屋に入ると、初老の男が一人、中にいた。
ジョシアと雰囲気がよく似ていた。白いものが混じり始めた金髪は、昔はジョシアと同じ色だったとうかがわせる。ただ、瞳はジョシアの黒とは違って緑色だ。
「……父上」
「話はディーネから聞いた」
彼――ジョシアの父にして現国王ファネリッジⅣ世は嘆息し、
「……馬鹿者が」
短くこぼす。
睨むような視線を息子に向けると、
「そんなにその娘が欲しかったのか?」
「……はい」
「もっとましな方法はいくらでもあったろうに」
「はい」
「まったく、情けない」
「仰るとおりです」
「……陛下」
口を挟んだのはディオだった。
「王太子殿下のなされたこと、国民にけじめを示す為には恐れながら……」
「言うな。ディオ」
国王は険しい顔をディオに向け、
「知っているのはこの四人だけだ」
また嘆息しながら言う。
「この馬鹿でも、これ以外に王位継承者がいない以上居てもらわねば困る。ここにいる四人が永久に口を閉ざしさえすれば良い。
……まあ、そういうわけで」
と、声の調子が明るくなっていた。
「この馬鹿がそうまでしてさらって来た花嫁を見に行くとするか。……忙しくて顔を拝んでいないのでな」
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