散弾銃プレアデス
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ピンクのレースが翻り、勢いよく足音が飛び出した。
「嬢ちゃん!」
安原が呼び止めた声は虚しく響き、その背中を擦り抜けていく。
開いたままの扉から少女は────皆瀬すばるは、瞬く間に姿を消した。
「嬢ちゃんっ…」
もう一度呼んだ原の横を駆け抜けた風は一陣、安原の影。
「皆瀬!!」
長く延びる廊下の奥へ小さくなっていくすばるを呼び、安原もその背を全速力で追った。
戦闘後の昼下がり、この時間の整備棟に人影はない。桃色の衣服の色もあり、その姿を見失うことはなかった。
安原の後ろを、原も慌てて追いかける。
いくつものドアを過ぎ、すばると安原の距離も流石に縮まっていく。
そして、安原はぴたりと立ち止まり、大きく息を吸ってから声を張り上げた。
「…すばるッ!!」
空気が固まる。
桃色の天使は、ぴたりと制止した。
「…すばる」
安原が歩を進める。
すばるは何も言わず、前を向いたまま立ち止まっていた。
「すばる」
安原の手がリボンに伸びる。