散弾銃プレアデス
「幸田君!」
目の前の背中が叫んだ。
「僕らは、思ったよりもスゴイのを相手にしてるのかもしれないね…!」
言いながらひた走る二人の鼻腔を刺したのは、完璧な異臭だった。
「う…」
幸田が鼻を押さえながら、思惑を巡らせる。
まさか、タンクがやられた?
そんなことになれば、本当に危険だ。
幸田の表情が歪んだ。
オイルタンクは、簡単に衝撃が加わらないはずの場所―――つまり、船底近くに設置されている。レーダーにもかからなかった敵軍がそれを攻撃できるはずがない…レーダーにかからず、視界にも入らない場所といえば………。
「ここで待ってて」
思考を遮ったのは、普段と変わらず潤みを含んだ紺野の声だった。
「え…え!?」
困惑しつつも、甲板に取り付けられた厚い鉄蓋を開き、飛び込んだその影をただ見送ることしかできなくて。
「隊長っ―――……!」
紺野利樹が闇に消えた。
依然として刺激臭が幸田を襲っていた。たまらず視線を上る。
同じ頃、別の海機隊員もまた、目を皿のようにして朝焼けの空を見つめていた。