散弾銃プレアデス
「あたし…あたし、安原隊長のとこに行く…!!」
すばるの膝ががくがくと震えているのが、三浦には端目にもわかった。
「…すばる、」
三浦がその名を呼べば、これもまた震えた声が反応を示した。
「だって…だって、みうさん!」
すばるが戦場でここまで取り乱すのは初めてだ。
言ってしまえば、すばるは幼い頃から訓練を受けた根っからの軍人だ。
戦場においては慢心も甘えも持ち合わせていない。
「大丈夫だ、待ってろ…すばる」
そのすばるが泣き喚き、自分自身の膝を押さえつけて叫んでいた。
揺らぐ膝、声、空。
「あんなおっきいのに、たった8機のラファールで適うわけないもん!!
今だって!
側面の威嚇弾も、真正面の壊圧砲も…全然効いてなかったっ!!」
軍人の知識を持つすばるだからこそ安原の危険や戦況に怖れおののいていることを、三浦は知っている。
それでも、
自身ですら空の戦況が緊迫していることを知っていても、
三浦には、ただ「大丈夫」を言い続けることしか出来なかった。
「す……ばるっ!!」
その瞬間、走りだしたすばるを三浦は持ち前の動体視力で捉え、手首を掴み、そのまま腕の中に引き込む。
「やだ、やだやだやだあああ!!」
手のひらに小さな水滴が落ちた。
じたばたと力任せに暴れるすばるを必死で押さえつけ、三浦もまた叫ぶ。
「すばる、待ってろ!頼むからっ!!」
「やだあああ!このままじゃ、隊長が死んじゃうッ!!!」