散弾銃プレアデス



「皆瀬!!」



遥か遠く、かすかな空色が曇り空のような鉛を手にして立っていた。

呼ぶ声にも反応を返さずに、引き金に指をかける。
敵を捕える瞳に色はない。


「くそっ…!」


並外れた集中力も、時には仇となる。

周りを見れるように集中しろ、と口では言うものの、こればかりはいつまでも直らない癖だった。


同時に肩に装備された無線機から雑音まじりに指示がとぶ。

『安原ぁあっ!』

高い女性の声に、無線を通した音響が割れていた。



『要請!速やかに帰還ッ!』



「…すみません、長官」


呟いて、安原は無線機の電源を落とす。

最後にかすれたような音が響いて、辺りは静寂に包まれた。


「皆瀬っ!!」


デジタルの腕時計に表示された時間は4時58分。


「……間に合えッ……!!」


あと20メートル。
腕を伸ばした。




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