散弾銃プレアデス
赤い点が崩れたコンクリートを穿つ。
安原の心臓をえぐったはずの点が、驚愕の色と共に激しく揺れた。
「……外したか」
歪む薄い唇。
灰色に立ち込める煙に視界を奪われた間に、新たに込められた銃弾。動く標的を探す目はいやらしく揺れる。
「航空機動のヘッド“Silent”か…いい獲物だ」
すばるを急かして行かせたことは間違いではなかった、と「仕事」に手をかけた安原はひとり思った。
自分の身体を這い上がる赤い点の正体は銃の照準・レーザーポイント。遠距離からの射撃を得意とする銃の性能と相手の位置が高台にあることから、立ち止まるのは安原にとって危険な賭けだった。
それゆえに、すばるを見送るまではいつ発砲してくるのかと内心冷や汗が背を伝っていたのだが、それを醸し出さないのは安原の肝の太さ、そして名だたる戦功と経験からくる自信の賜物だと言える。
安原は右肩から掛かったランチャーを手にすると、他より一回り大きな弾丸を装填した。がしゃん、と弾が落ちる特徴的な音。
それを悟られぬよう、安原は手前の鉄筋が飛び出したコンクリートを蹴り上げた。