散弾銃プレアデス
とても眩しい。
ふんわりとした世界には白い光が差し込んで、万華鏡のように輝いている。
身体を取り巻く、ひやりとした影が緩やかに揺らいだ。
───車が走っている。
自分はその助手席に座らされていた。まだ未覚醒の頭を回転させて、運転席を横目に見る。
メッシュの入った金色の髪。栗色の瞳。真っ直ぐに前を見つめながら、ただハンドルを握る手。
「原さん…?」
「おう、起きたか嬢ちゃん」
国家特務陸上機動隊・隊長である原伸吾は、口角を吊り上げて笑った。
未だ状況を掴めないすばるに、ハンドルを握ったままの原が続ける。
「さっきのこと、覚えてるか?」
「……あたし、前線へ向かって一次攻勢を抜けて、そしたら上から瓦礫が降ってきて、それで……」
思い出せない。
つい先程のことなのに、思い出せない。
灰色。白色。薄く浮かぶ色彩はモノクロ。
「それで……、」
でも、それまで。
パレットには絵の具を乗せることもできるが、輪郭をうまく描けない。
「俺たち陸機が援護に来たんだ。
市民安保を目的にして出動した空機の撤退支援ってやつ」
原の言葉に小さく頷いて、正面を向いた。
車が走るにつれ、世界が変わっていく。
人の影。建物。自転車。幸せのかたち。
自分の住む世界じゃ、ない。
目の前にあるのに、
自分はこの世界を知らない。
中学生くらいだろうか。
まだ真新しい制服を着た女の子が2人、笑いながら歩いていく。