散弾銃プレアデス



「(…難しいよなあ)」



頭をかく原が、未だ難しい顔をして一点を見据えるすばるに声をかけた。

「なぁ嬢ちゃん」

つ、と顔を上げ、すばるが首をかしげた。
車は赤信号で再び停まった。


揺らぐ風と、優しい木漏れ日。


ざわめく世界に一点、原の言葉が落ちていく。




「やっぱりなぁ…嬢ちゃんは“皆瀬すばる”だろ」




きょとん、とすばるは不思議そうに原を見た。そのくぐもった声が躊躇いがちに続ける。

「考えてみたけどよ…それ以外にはやっぱ、どうにも変わんねーよ」


そう言ったきり、原はまた前を向いてハンドルを握る。
搭載された受信機がざらつく機械音で言ったあとの車内は完全な静寂に包まれていた。


原の視界の端でフロントガラスに映るすばるは、じっと動かずに灰色の曇天を見据えていた。





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