散弾銃プレアデス
「魔法に料金は請求しない主義なの」
おどけた口調ではあるが、ミユキの言葉は放たれてすぐ、力無く落ちた。
肌にまとわりつくような、嫌な痛みがチリチリと原を焼く。
いくら軍隊にいるからってさあ。
ミユキは俯いたまま、重ねた両腕の中、くぐもった声で言った。
「……ああ」
「酷くない?」
熱を帯びる言葉尻。
原は動かないミユキから溢れる言葉が自分に刺さっていくような気がした。もし実際にそうだったとしても避けることはしないだろう、と原は思った。
自分はすばるを道具や兵器だなんて思っていないが、今のすばるに課された悪夢を取り払ってやることなんか出来ないでいた。
すばるを囚う大人からいつだってすばるを庇うつもりで、実際は周囲の人間と同じだ────
原伸吾は陸の戦闘を統べる人間であるが、“それだけ”だった。
それは自身も理解していて、歯痒くてたまらないでいる。
だからこそ、同じ年頃の少女を見つめるすばるに居たたまれず、この場所に連れてきたのだった。
すばるが文句や不満を言ったりしないのは、知らないから?
普通の女の子として過ごす自分は想像出来ないのだろうか。
「それでも、あたしら女の子だもん」
ミユキの声は、やけにハッキリと聞こえた。
「女の子だもん」
繰り返したその言葉に、確かな力が宿っているような響き。
握り締めた原の手が小さく震えている。
そうだ。
すばるは、「女の子」だ。
当たり前のことに、そして、そんな「当たり前」が当たり前で無いことに、原は酷く憤りを感じていた。
なにも出来ない自分に対しても─────。