僕は彼女の事を二度愛していた

「それより恵さんさ、ここにこのままいると遅刻しちゃうよ。」
「知ってます。遅刻ですよね。」
「だったら、どうすればいいかわかるよね？」
「はい。」
「よし、じゃ、会社に行って。」
「嫌です。」
やはり、この子はわからない。
「嫌って・・・。さっき、どうすればいいかわかったって。」
「はい、メグメグ、わかってますよ。」
「だったら、なんで会社に行かないの？」
「えぇ、先輩、そんな事もわからないんですか？意外とおバカですね・・・。」
「おバカって・・・。いったい、僕のどこがバカなんだ？」
なんとなくだけど、彼女にバカと言われるとムッとする。
「そんなに怒らないで下さいよ。だって、先輩、本当におバカなんだもん。しょうがないでしょ。」
「だから、どこがおバカなんだ？」
「しかたない。メグメグが教えてあげますよ。メグメグだけが、会社に行ったとしますよね。そうしたら、メグメグはどうなるでしょう？」
「そりゃ、怒られるだろうな。理由もなく遅刻したんだから。」
「ですよね。でも、メグメグが先輩と一緒に会社に行ったらどうなると思います？」
「どうなるって・・・。」
驚いた。バカのように見えて、かなり頭がキレるのかもしれない。僕はそう思った。
「先輩、部長に何かお願いされてましたよね？だから、ここで何かしてたんでしょう？だから、メグメグも先輩の仕事、手伝って遅れたって事にすれば、怒られなくてすむんですよ。ねっ？」
言い返せない自分が悲しかった。
「だから、メグメグ、先輩が一緒に会社に行ってくれるまで、ここに一緒にいますよ。」
「おいおい・・・。そんな事言われても困るよ・・・。」
「でも、先輩が一緒に会社に行ってくれないと、メグメグも困りますぅ。」