僕は彼女の事を二度愛していた
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工場が併設されている関係で、社食はこれから夜勤を始める工員達で溢れていた。
「あいかわらず、すごい人ね。」
絵里香は言った。
めったに夜の社食に来る事はない。来るのは、たまに残業した時くらいだ。その時は必ず、今日と同じような感じで混みあっていた。
「さてと、何をおごってもらおうかな。」
きっと絵里香のような女子社員が多いのだろう。この社食は、社食とは思えないほど、デザートの類が充実している。
「あんまり高いのは、勘弁してよね。」
恵は念を押した。
しかし、そう言われるといじめたくなる。絵里香は根っからのSだ。
「じゃ、これにしよう。」
「えっ、嘘。勘弁してよ。」
絵里香の選んだメニューは、よりによってデザートの中で一番高いものだ。
「他のがいいよ。ほら、これとかこれもおいしそうだよ。」
恵は他のメニューを、いくつも絵里香に勧めた。しかし、それのどれも安いものばかりだ。絵里香が納得する訳もなかった。
「ダメダメ。私は、あれがいいの!情報聞きたいんでしょ?」
そう言われると、恵は断る事は出来なかった。
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