僕は彼女の事を二度愛していた
いつもの駅には、また彼女の方が先に来ていた。
僕はそれに気がつき、反射的に謝った。
「すみません、遅れちゃって・・・。」
彼女は何も言わない。かなり怒っているようだ。
「本当にごめんなさい。僕の方から誘ったのに・・・。」
彼女を怒らせてしまった。僕は必死に謝るしかない。
すると、彼女は突然笑い出した。
「う、嘘ですよー。」
「へっ・・・。」
「怒ったフリしただけ。ホント、大河内君っておもしろいね。」
一瞬、何か懐かしいものを感じた。でも、それが何かはわからなかった。
「怒ったフリって・・・。ひどいなぁ・・・。」
「だって、向こうの方からすごい形相で走ってくるから。おもしろそうだから、からかってやろうかなって。」
「・・・。」
主導権は、完全に彼女が握っていた。
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