僕は彼女の事を二度愛していた
「で、どこに行きたい?」
何をするか決めたあとは、どこに行くかだ。ここら辺は、ドライブすると言っても、それほど綺麗な景色が見える訳でもないし、もちろん夜景など望める訳がない。そんなごく普通の場所だ。
だから、いつも宛てもなく走り続ける。そうしていた。
「・・・。どこでもいいよ。」
これにはグッときた。いつもなら「いつもと同じ感じでいいよ。」と言われて、宛のないドライブがはじまる。それが、今日はどこに行ってもいいのだ。
(どこでもいいって事は・・・誘っているのか・・・?)
望の表情からは、どう考えているか読み取れない。でも、僕は限界だった。
「ほ、本当にどこでもいいの?」
「うん、拓海君の好きな所でいいよ。」
頭の中には、あの場所しか浮かんでこない。
そして、あの場所を、僕はあらかじめ調べてある。それくらいに、僕の気持ちは切羽詰まっていた。
「わかった。」
ツバを飲み込み、僕は車を走らせた。
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