僕は彼女の事を二度愛していた

「こんな所、はじめてくるよね？」
住宅街には、薄暗い街灯が幾つか灯っているだけだ。それなのに、望は景色の変化に敏感だ。
それが、僕の決心を鈍らせる。心の中を、見透かされている気がしたからだ。
「よ、よくわかるね？」
わきの下が濡れてきた。
「だって、拓海君とのドライブ、何回目だと思っているの？いくら何でも覚えちゃうよ。」
人間、悪い事を考え始めると止まらない。今の一言も、遠回しにワンパターンと言われている気がする。
「そ、そっか。それもそうだね。」
動揺しているのは明らかだ。口が動く事を、拒絶しているように重い。
「でも、今日は違うでしょ？ワクワクする。」
「・・・。」
「楽しみだな。」
「・・・。」
シャツの脇に滲んだ汗が、僕の気持ちを語っていた。