僕は彼女の事を二度愛していた
「ねんねこ、ねんねこ、ねんねこなぁ・・・。」
おとなしくなったかと思っていたら、望は急に歌い出した。
「な、なんだよ。いきなり・・・。」
「歌っているんだよ。」
「だから、なんで突然歌い出すんだよ。」
望は、伏し目がちになった。
「この歌ね、おばあちゃんがよく歌ってくれたんだ。」
「おばあちゃん?」
「うん、夜怖くて眠れない時、学校で嫌な事が会った時、いつも歌ってくれた。だから、この歌聴くと落ち着くんだ。わかるでしょ?私、今、すごく緊張しているんだよ。」
「望・・・。」
情けない男だ。僕はとことん情けない。そう思った。
けれど、いきり立った衝動は、僕と無関係に行動していた。
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