僕は彼女の事を二度愛していた
背中に乗られ、僕はまた身動きをする事が出来ない。
「ふふふ。今度は後ろから絞めてあげる。」
うなじ辺りに親指をあて、渾身の力で絞めてくる。苦しいと言うより、頭が割れそうに痛い。
「や、やめろ。」
「だから、そう言ってやめると思う?この口がいけないの?そんなバカな事を言うのは、この口なの?」
望は両手で僕の頭を、何度も何度も打ちつけた。
歯で口の中が切られ、ズタズタだ。血が口いっぱいに広がり、鉄の味がする。時折、鼻もぶつけ、鼻血も止まらない。
「いいザマね。さぞ、屈辱でしょ?でもね、私は・・・私は、もっと屈辱だった・・・。愛していた男に殺され、挙げ句の果てにはツバまで吐きかけられ・・・。」
「い、生きて・・・いだのか・・・?」
「死んでたわ。死んでたけど、悔しくてどこにも逝く事は出来なかった。おばあちゃんも、迎えに来てくれたわ。それでも、逝けなかった。」
死んでいるはずの望が泣いている。床に、何粒も涙がこぼれている。
「でも・・・、悔しい思い・・・したのは・・・俺だっで・・・。」
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