僕は彼女の事を二度愛していた
自分が声をかけられているとは、彼女は考えもしなかった。声を無視し、そのまま改札へと進んだ。
「すみません。」
くじけない加藤は、もう一度同じように声をかけた。
さすがに二度目となると、自分が声をかけられていると思ったらしい。彼女はゆっくりと振り向いた。
長い髪が舞う。CMではよく見る風景だけれど、実際に見るのははじめてだ。変な所で、感動してしまった。
「なんでしょうか?」
見とれていて、次に何を話すか、何も考えていなかった。
「あ、あの・・・。」
こんな時、どうしたらいいのだろう。良いアイデアが浮かぶどころか、気の利いた言葉ひとつすら出て来ない。
「なんでしょうか?急いでるんですが・・・。」
「あ、そうですか。じゃ、一緒に、一緒に歩きながら話していいですか?」
「は、はぁ・・・。」
あまりに突飛な願いに、彼女は拒絶する事が出来なかった。
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