僕がここにいる限り
変わり者
―鮮やかな緑を頭に思い浮かべて、
思うままにキャンバスに描いていく。
少し描くと、自分の思った通りのものがキャンバスに生まれた。
そのまま次のものを描こうとした時、
「朝原くんすごーい」
「あんなの描けるってうらやましいー」
女子のひそひそとした話声が聞こえる。
内容は何だか知らないが、僕をイライラさせるには十分だった。
…おかげで頭に思い描いていたものが消えましたから。
僕は静かに筆を置き、立ち上がる。
「あ、朝原くん。どうしたの?」
『…気分悪くなったので保健室行ってきます。』
「え、ちょっと…」
慌てる先生を無視して、
スタスタと部屋の外に出る。
廊下は新鮮な空気に満ちていて、
美術室特有の匂いよりよっぽど良かった。