逃げ道なし!
部室からでてくると、また奴は部屋へ振り返り、口から何かだしている。

そして、隣の部屋へサササーと素早い動きで入っていく。


川瀬は、逃げなきやダメだと思った。

しかも、この階中に漂っているだろう"におい"には耐えられなくなっていた。


それに部屋の中で、あの"素早さ"から逃げきる自信は川瀬にはなかった。


窓から外を見ると、窓のすぐ横にパイプがついている。


川瀬は、パイプにしがみつき、ゆっくりと降りた。


思った以上に、うまく下に降りることができた。

ところが、まだ、"アイツ"が柔道部に着くまでには・・・・・・・・・数分あるはずだった。


だが・・・・・・・すでに、奴は柔道部の窓から川瀬を見ている。


川瀬の出した"パイプ"の音・・・・・・もしくは"汗"の臭いを感じ取られたのかもしれない。


そして次の瞬間、川瀬は学校の本館の方へ走り出した。


学校の外に出るには本館を"通るしかない"・・・・・・・からだ。


同時にゴキブリは大きな羽を、こすりあわせ、空中に黄色い液体をまき散らしながら・・・・・・・・もうスピードで、柔道部から空を切って川瀬へと向かってくる。


幸運にも、本館のドアは開いていた!
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