逃げ道なし!
高い波しぶきが立っている。


"バシャアーン"


田中はその方角を向いた!


"バシャアーン"


再び後ろのほうでも何かが落ちてきたようだ。



空は不気味なほど"黒く"なっていた。



田中は泳げなかった。


だがこのままここにいてもしょうがないと、田中は力を振り絞り、水に飛び込んだ。


久々に入る水は・・・・田中にはとても冷たく感じられた。


田中は小学生の時に習った"バタ足"をしながら、手を"がむしゃら"に掻き・・・・・・・・進んだ。


息継ぎの時は、全身の力を使って首を水面からだした。


田中は必死だった。


息継ぎを失敗することは"死"を意味する。


田中は死を意識せずにはいられなかった。

そして、田中は思いつく!

"犬掻きだ"


テレビで犬が泳いでいるのを思いだし、必死でやってみると、なんとか首を出したまま進む事ができた。


暫く進んでみると、急に"生臭い"臭いがし始めた。


田中の足に・・・何かが絡まっている。

"ワァァアッ!"

人の髪の毛・・・・・・そして首がついていた。

気がつくと、田中の周りには沢山の、肉片が散乱し、水は"赤"になっていた。


"これは人の血だ"



田中は確信する。
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