勝利の女神になりたいのッ!~第1部~
「紫衣、すまなかった。お前を引き止めるべきではなかったのかもしれない。
俺は寂しかったのかもしれん。」
お兄ちゃんの言葉に私は顔を膝に埋めままあげることなく首を左右に降り続けた。
大きな掌がポンポンと頭に落とされた時、私の目頭が熱くなった。
「俺は誰かに助けてもらいたかったのかもしれない。
過ちを犯す前の俺に忠告をしてくれる誰かをずっと探していた。」
「見つかったの?」
「あぁ、見つけた。」
「その人はどこにいるの?私が呼んできてあげるよ。」
「それは出来ない。」
「どうして?紫衣はお兄ちゃんの役に立ちたいの。」
お兄ちゃんは苦しそうに顔を歪めて首を横に振った。
どうしてダメなの?
紫衣がまだ子供だから?
紫衣に力がないから?
悲しくて瞳からポロポロと涙が零れた。