勝利の女神になりたいのッ!~第1部~
だけどお兄ちゃんは悲しそうな表情のまま首を横に振った。
「どうして?
どうしてお兄ちゃんは橋を渡らないの?
紫衣も一緒だよ。紫衣もお兄ちゃんと一緒に行くから!」
悲しくて寂しくて瞳から溢れる涙がポトポトと音を立てて落ちていく。
私の涙がお兄ちゃんの側にある水瓶に落ちたとき水瓶が白い光に包まれてその形を変えた。
「紫衣、泣かないでおくれ。
俺は長くこの世界に止まり過ぎたのだ。」
私の両頬に手を添えてからお兄ちゃんは親指で私の目元を優しくなぞるように拭ってくれた。
私達は言葉もなく見つめ合い、また元のように並んで座っていたんだ。