勝利の女神になりたいのッ!~第1部~
夢中で目新しい物に目を動かした。
私にはわからない物ばかり。
服装も、髪型も生活さえも全てが違う。
取っ手を上下する度出てくる水。
つまみをひねるだけで火がつく台。
とても便利で楽な世界。
どれくらいの時間がたったのかわからないくらい私は夢中で散策した。
そして泣いていた女の子がお兄ちゃんを救うただ1人の人だと、なんとなく思えた。
その人が不思議な四角い物に言葉をかけている時お兄ちゃんの名前を言ったんだ。
「滋賀は三成が大切にしてきた場所なんだよ。
私は三成が生きた場所に行ってみたいの。」
「うん。好き!
三成が大好きなの。
逢ってみたいなぁ三成に…。
本にはとっても酷い人だって書かれてるけど、きっとそんなの嘘だよ!
絶対素敵な人に違いないわ。
逢えるなら絶対に逢いたいよ。
私が過去に行けたらなぁ。
そしたら三成は絶対関ヶ原で勝利できるもの!
家康に斬首の刑になんてさせないわ!」
その人の言葉を聞いて私は背筋が凍るように冷たくなった。
その人が四角い物に何故そんな言葉をかけるのかはわからない。
だけどお兄ちゃんの言葉が私の耳の奥に響いたんだ。
「処刑されたのだよ。」
胸がギュッと苦しくなった。
ここはお兄ちゃんも私も存在しない世界。
私たちが生きた世界のずっとずっと先の世界。
400年後の世界なんだ。