勝利の女神になりたいのッ!~第1部~
目が覚めると私はお兄ちゃんに逢った場所に横たわっていた。
そこにはお兄ちゃんの羽織と書状、そして水瓶が綺麗に並んでいた。
「戻ってきたんだ。」
まだボンヤリする頭を押さえながら水瓶を覗いてみる。
紫衣が泣いていた。
泣きながら笑っていた。
とうとう紫衣の心配していた事が起こったんだね。
ずっと泣いて悩んでいた紫衣。
逃げずに向っていったんだね。
涙を浮かべながら必死で笑顔を崩さないと頑張る紫衣の姿に胸がギュッと締め付けられたように痛み出した。
駆け出した紫衣を追いかける芽衣ちゃんと良君。
必死に走る紫衣。
私と長吉さんと真衣さんと同じように一緒に存在することで苦しんでいる。
紫衣と良君と真衣ちゃんは私たちに似ている。
「紫衣、こっちへおいで。」
私は無意識のうちに呟いていた。