勝利の女神になりたいのッ!~第1部~
近くまで来ているけど場所がハッキリわからないから出てきて欲しいと言う内容の電話はすぐに切れてしまった。
終話音を聞きながら自分に落ち着くように言い聞かせて私はバックを手に持って部屋を出た。
石野さんに指定された場所は私の住むマンションのから一番近いコンビニ。
走っていけば3分もかからない。
心の準備が全く出来ていないからこの距離は今の私には近すぎる。
だけど何も考えられなくなった頭で考えても仕方ないのかもしれないと自分を納得させた頃コンビニの明るい看板が見えてきた。
コンビニの駐車場には車が5台止まっていた。
滋賀で乗せてもらった車は止まってはいない。
もしかして場所を間違えたのかと不安になったとき白いワゴン車のドアが開いて石野さんがおりてきた。
「お久しぶりです。わざわざすみません。」
息を切らしながら挨拶をすると石野さんはクスリと笑って私の頭の上に大きな掌を乗せてきた。
石野さんが触れただけで私の心は早くうるさく高鳴る。
「別にいい。車に乗れ。」
促され後部座席のドアを開けようとする私の腕を掴んで助手席の前まで連れてくると石野さんは助手席のドアを開けて私に乗るように言った。
「すいません。」
「助手席に乗るのは抵抗があるのか?」
「いえ、なんとなく...です。」
曖昧な私の答えに石野さんはまたクスリと笑って車を発進させた。