勝利の女神になりたいのッ!~第1部~
静かな車内に聞こえてくるのはさっきより少し大きなエンジン音。
ゆっくりと走る最初の運転とは変わってスピードが出ている車の振動は少し大きい。
「怖い?」
俯いたまま話さなくなった私に気を使ってくれたのか石野さんは尋ねてくれる。
「いえ...。」
顔を上げずに答える私。
「ごめんな。ちょっと急いでる、もうちょっとだから少し我慢してくれ。」
前を向いたまま話をする石野さん。
「大丈夫です。」
怒っているんじゃないってわかって私は安心した。
「携帯、嶋田だった。」
「そうですか。」
「お前の友達と急にドライブに行きたいって思ったから飯はまた今度ってふざけた内容だった。ごめんな。」
「いえ...。」
それでどうして急いでいるのかって疑問があったけど口にはしなかった。
「ドライブに行く場所はだいたい予想つくから合流しようと思って今車を走らせてる。」
「はい。」
それで急いでたんだ。
「友達と合流したほうがいいだろ?」
信号待ちの時ふいに掛けられた声と撫でられた頭。
私のため?
私が不安にならないように芽衣ちゃんを追いかけてくれてるの?
わかりにくい石野さんの特有の優しさに心があたたかくなった。
「あの...。ありがとうございます。」
石野さんのほうに顔を向けて笑った私を見て石野さんはとても綺麗な笑顔を浮かべて口を開いた。
「どういたしまして。やっと笑ったな。」
優しくて、だけど解りにくいのは不器用だから...。
だけどとても綺麗な笑顔の石野さん。
私、あなたをどんどん好きになっている。