勝利の女神になりたいのッ!~第1部~
静かな車の中、運転する石野さんの横顔を見ているだけで心臓の音が大きくなる。
何も話せない自分をこれほどもどかしく感じたことはない。
石野さんに音が聞こえてしまうんじゃないかってくらい激しくドキドキと音を立てる心臓を沈める方法を考えるだけで精一杯だった。
「あのメール、紫衣じゃないだろ?」
ふいに話しかけられて何のことかわからない。
だけど回らない頭で必死に考えて思い出した。
芽衣ちゃんの早業!!
慌ててメールの送信ボックスを確認すると可愛い文面が目に飛び込んできた。
恥ずかしいくらいの甘い文面に赤面する私を見て石野さんはクスクスと笑いを漏らしていた。
「あの...これは...。」
芽衣ちゃんが打ったって言っていい?
なんて言ったらいいのかわからない...。
続く言葉を見つけられない私に石野さんは芽衣ちゃんだろ?とおどけた調子で聞いてくれた。
だから私も素直にコクリと頷いた。
「やっぱりなー。紫衣にしては上出来すぎる。」
クスクス笑いながら話す石野さん。
上出来すぎるってちょっと失礼じゃないですか?
思ったことを口にするのはやめておいた。
実際芽衣ちゃんの打ったようなメールを私は返せない。
積極的で可愛い芽衣ちゃん。
人見知りする私と違ってとっても社交的な芽衣ちゃんに私はいつも助けられている。