勝利の女神になりたいのッ!~第1部~
佐和さんと一緒に?
「佐和もお前を愛している。お前と共に生きることを望んでいるんだ。
だからお前も佐和を大切にしていかなければならない。そうではないのか?」
大切な人...。
そう、佐和さんが好き。
不思議なくらい惹かれた人。
「お兄ちゃんは知っていたの?佐和さんが私の大切な人だって..。」
「知っていた、お前たちが惹かれあうのは俺にはわかっていた。」
「それはどうして?」
「紫衣、歴史は繋がっているのだよ。時代を渡ったもう一人の紫衣もお前も選ぶ男は決まっている。出逢い愛し合う者は定められているんだ。」
「紫衣もお兄ちゃんに愛されてるんだね。ちゃんと出逢うことができたんだね。
池の水に写った紫衣はとても幸せそうだった。」
「そうだ、お前も出逢っただろう?佐和と共に生きていけ。」
歴史は繋がっている。
紫衣もおにいちゃんと共に生きているんだ。
私は?
お兄ちゃんの魂を共有する石野さんと一緒に生きていきたい。
お兄ちゃんを求めるのではなく、石野さん自身を私は求めている。
「ようやく気付いたようだな。」
お兄ちゃんは私を見て優しく微笑んだ。
「紫衣、もう行かなければならない。佐和が帰ってきたようだ。」
涙を流す私の瞼にそっと唇を落とすとお兄ちゃんは静かにその姿を消した。
「佐和に全て任せておけばいい、お前をきっと幸せにしてくれる。」
俺の選んだ男だ、全てを委ねて紫衣らしく生きろ。
姿を消してから掛けられた最後の言葉はお兄ちゃんには珍しく茶化したような口調だった。
そしてその言葉の後部屋の扉が開いたんだ。