勝利の女神になりたいのッ!~第1部~
「大きなお世話だ!」
部屋に入ってくるなり石野さんは力強く、それでも声は小さく呟いた。
さっきのお兄ちゃんの茶化すような言い方はきっと石野さんに向けられたものなんだろう。
石野さんは小さく溜息をついてからベッドに近付いてきた。
「気分はどう?」
「大丈夫です。」
「瞼がすごく腫れているよ。」
そう言って私の瞼に触れる石野さんの手はとても冷たくて気持ちよかった。
「三成と話できたんだな。」
ベッドに腰掛けながら話す石野さんの表情はとても柔らかいものだった。
お兄ちゃんが石野さんのことを話すときと同じ表情をしている。
二人はとても信頼しあっているんだね。
「はい、いつも見守ってくれていると...佐和山からいつも見てくれているといってました。」
「そう...。」
俯き加減で言葉を落とす石野さんに不安になった。
お兄ちゃんのことを聞くのは嫌なのかもしれない..。
「石野さん...。」
彼の少し距離をつめて声をかけると彼の唇が私の唇を塞いだ。
「これも三成に見られてるのかな?」
そう言ってニッコリと笑う石野さんは悪戯が成功してとても満足そうな顔をしていた。
「心配したんですよ?」
「ゴメンゴメン、でも石野さんって呼んだからお仕置き!それと三成に見せ付けたかったんだ。」
そのまま私は石野さんの腕の中に閉じ込められた。
ほんの少し子供っぽい石野さん。
いつもよりほんの少しだけだけど....
そんな彼の姿もとても好きだと思ったんだ。