勝利の女神になりたいのッ!~第1部~
ソファーに近付くにつれ足が進まなくなった。
芽衣ちゃんと嶋田さんは肩を寄せ合ってソファーに腰掛け、二人でテレビを見ていた。
かかっているのは芽衣ちゃんの大好きなバラエティー番組。
テレビから聞こえる笑い声と一緒に二人の楽しそうな笑い声も響いていた。
いつも通りの芽衣ちゃん。
私が彼女の瞳に映ったら彼女はどんな表情を浮かべるの?
やっぱり怖い...。
「紫衣、大丈夫だから。」
いつの間にか私の側に来ていた石野さんの囁く声が私の耳に届いた。
隣に立つ石野さんは私の肩を抱き寄せて額に唇を落とした後ソファーに座る嶋田さんに声をかけたんだ。
「嶋田、こっちで話そう。」
言葉を落とした石野さんに肩を抱かれたままダイニングテーブルの椅子に誘導され、私はそのまま座らされた。
俯いたまま顔を上げることができない。
芽衣ちゃんの表情を見るのが怖かったんだ。
「大丈夫だから。」
私の隣に座った石野さんは震える肩を抱き寄せて今度は首筋に唇を落とす。
そしてその唇は私の耳に移動してペロリと耳に彼の舌を感じて驚いた私は顔を上げてしまった。
「石野さん、目のやり場に困りますよー。」
クスクスという笑い声と共に聞こえてくるのは芽衣ちゃんの楽しそうな声。
「ホント紫衣姫は溺愛されてるよな。」
「私も溺愛されたいよー!!」
「俺だって芽衣姫に夢中だぞ?」
「疑問系で言わないでよー。でもそういうところが嶋田さんっぽいけど..。」
「おいおい、俺は一途な男なんだぜ。」
「知ってますよ。」
普段と何も変わらない嶋田さんと芽衣ちゃんの会話に黙って耳を傾けていた私。
石野さんの行動に一度は顔を上げたけれど、それでもすぐにまた俯いてしまった私には二人のやり取りは声だけでしか確認できない。
怒っている様子ではない、むしろ楽しそうな雰囲気。
だけどそれは嶋田さんとの会話だからだろう。
私と話すとどうなるの?
石野さんに何度も大丈夫だといわれても恐怖心は取れることはなかった。