勝利の女神になりたいのッ!~第1部~


「どうして?」


言葉が上手く出てこなかった。


「さっき、紫衣を一人にしているのは心配だったんだけど池に三人で行って来たんだ。」


石野さんの優しい声が響いた。


「ちゃんと逢えたよ。私も紫衣と逢ってきたんだよ。」


石野さんの言葉の後の芽衣ちゃんの言葉を聞いて私は驚いたんだ。


お兄ちゃんが見せてくれたの?


芽衣ちゃんも紫衣と逢わせてくれたの?



「紫衣とっても幸せそうだった。ずっと焦がれていた人の側で生きているんだもの幸せでないわけはないよね。だから、ありがとうなんだよ。紫衣と三成を逢わせてくれた事本当に嬉しいの。」



「でも...でも私は芽衣ちゃんから紫衣を奪ったんだよ。」


「私は何も奪われてないわ。だって紫衣は今私の目の前にいるじゃない。」


「私は、芽衣ちゃんの紫衣ではないもの。」


「そんな悲しい事言わないで。紫衣と一緒に過ごした時間を否定するようなこと言わないで。私にはあなたも紫衣も同じように大切なのよ。」






ギシギシと締め付けられたような胸の痛みがスッと無くなった様な気がした。


冷たく凍りついたような体にも血が巡るような感覚が戻ってきた。




頬を伝うのはあたたかい涙。


流れ落ちる涙を拭ってくれる優しい指。


嗚咽を漏らす私を優しく包み込んでくれるあたたかい胸。


震える体を抱き寄せてくれる力強い腕。


一人じゃないんだと言ってくれるあたたかい言葉。




恵まれすぎている。


時を越えてきた私に充分すぎるほどの愛。


幸せなのは私だ。



紫衣と私の運命が共に進むのなら、定められているのならきっと紫衣も今幸せなんだね?


私のようにぬくもりに包まれているんだね。








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